不動産売買のクーリングオフについて
不動産仲介
不動産購入
宅地建物取引業法の規定
消費者保護の観点からクーリング・オフ制度というものがあります。
宅地建物取引業者が自ら売主となって宅地建物取引業者でない者との間でなした、事務所等以外の場所における買受けの申込みや売買契約は原則として、8日間以内であれば撤回や解除をすることができます。しかし、クーリング・オフ制度は「買受けの申込みや契約の締結をどこで行ったか」によってその適用の有無が決まります。
契約の当事者についての要件
売主が宅地建物取引業者であることが必要です。宅地建物取引業者とは、国土交通大臣または都道府県知事の免許を受けて、宅地・建物の売買や交換、それらの媒介などを反復継続して行うものです。売主が宅地建物取引業者であれば、買主は個人であっても法人であってもクーリングオフが可能となります。しかし、売主が宅建建物取引業者でない個人であれば、買主同様に売主も素人となるため、買主だけを保護するクーリングオフは適用されません。
【クーリング・オフ制度の適用の有無】
事務所等で行った場合 → 適用されない
事務所等以外の場所で行った場合 → 適用される
適用がある場所とは?
・テント張り、仮設小屋等の一時的かつ移動が簡易な施設(土地に定着しない現地案内所)等
・不動産業者が申し出た場合の買主の自宅又は勤務先(不意打ちや電話をかけて押しかける)等
・喫茶店、レストラン、居酒屋(騒がしい)等
このように冷静な判断ができないような場所はクーリング・オフ制度の適用が認められます。
適用がない場所とは?
・自ら売主となる不動産業者の事務所(お客様が事務所に行っている)等
・不動産業者が一団の宅地・建物の分譲を案内所を設置して行う場合はその案内所(土地に定着する施設に限る。モデルルーム)等
・不動産業者の相手方(お客様)がその自宅または勤務する場所において、宅地・建物の売買契約に関する説明を受ける旨を申し出た場合のその相手側の自宅または勤務する場所(お客様が自ら不動産業者を呼んだ)等
※あくまで自宅か勤務場所になります。
申込みの場所と契約の場所が異なる場合
買受けの申込みをした場所と契約を締結をした場合が異なる場合は、買受けの申込みをした場所においてクーリング・オフ制度の適用の有無を判断します。
【クーリング・オフができなくなる場合】
①履行関係の終了
・物件の引き渡しを受けかつ、代金の全額を支払ったとき
②8日間の経過
・不動産業者が、法廷事項を記載した書面を交付して、クーリングオフができる旨、及びその方法を告げられた日から起算して8日経過したとき
※不動産業者に告知する義務はありません。
【クーリング・オフの方法と効果及び特約の効果】
①方法
申込み撤回等の意思表示は、書面により行うことが必要になります。
②効果
・発信による効力発生
クーリングオフは申込み者等が書面を発した時にその効力が生じます。(ポストに入れた時から)
・現状回復
クーリングオフがなされた時は、受領した金銭等を速やかに返還しなければならず、また、損害賠償の請求や違約金の請求等はできません。
③これに反する特約の効果
申込み者等に不利な特約は無効となります。
(例)・事務所の定義の範囲を拡大する特約
・クーリングオフがなされても損害賠償を請求できるとする特約
・クーリングオフができる期間を8日より短くする特約
【まとめ】
売買契約はいったん締結すると、相手方に債務不履行等がなければその契約を解除できないのが原則でした。しかし、宅地・建物の売買契約においては、買主が自由に意思表示することができないと思われる場所で、強制的に契約の申込みをさせられるなど、強引な取引により契約が締結されるケースがあとをたたなかったのです。そこで、宅地建物取引業法は、1970年代から消費者保護のために、このような買受けの申込みや売買契約を一定期間無条件で撤回解除ができることにしたのです。
※インターネット等で電子契約でクーリングオフ書面は電子可能というような記事が出ておりますが、東京都住宅政策本部に問い合わせをしたところ、現時点で電子契約の場合であってもクーリングオフは書面で行わなければならないとのことですので、ご注意くださいませ。