不動産用語解説

手付金等の保全

物件の引渡し前に買主が支払う金銭(手付金・内金中間金)について、第三者に保管させる等の方法で保全することを「手付金等の保全」という(宅地建物取引業法第41条・第41条の2)。

手付金・内金・中間金を合わせて「手付金等」と呼ぶ。この手付金等は、物件がまだ買主に引き渡されない時点で買主が売主に交付する金銭である。
従って、売主が物件を引き渡せない等の不測の事態が生じた場合に、手付金等は、確実に買主に返還される必要がある。そこで、宅地建物取引業法(第41条・第41条の2)では、手付金等の保全について必要な措置を規定している。

1.手付金等の金額の要件
手付金等は一定の金額に達した場合にだけ、保全措置を講じる義務が生じる。その金額の要件は次のとおり。

1)工事完了前の宅地または建物の売買の場合
「手付金等の合計が代金の額の百分の五を超えるとき」または「手付金等の合計が1,000万円を超えるとき」には、保全措置を講じなければならない。
例えば2億2,000万円の一戸建て(未完成)の売買契約に際して買主が1,050万円の手付金を交付したとする。このとき2億2,000万円の5%は「1,100万円」なので、手付金は「5%以下」であり、この点では保全措置は不要に見える。しかし、手付金は「1,000万円超」であるので、やはり保全措置が必要になる。
また、例えば3,000万円のマンション(未完成)の売買契約に際して買主が300万円の手付金を交付したとする。このとき3,000万円の5%は「150万円」なので、手付金は「5%超」であり、保全措置を講じなければならない。
2)工事完了後の宅地または建物の売買の場合
「手付金等の合計が代金の額の百分の十を超えるとき」または「手付金等の合計が1,000万円を超えるとき」には、保全措置を講じなければならない。この考え方は上記1)と同じである。

2.保全措置の内容
上記の金額の要件を満たしたとき、講じるべき保全措置は次のとおり。

1)工事完了前の宅地または建物の売買の場合
手付金等の保全措置としては「銀行等による保証」と「保険事業者による保証保険」の2種類の措置のうち、どちらか一つを講じればよい。
2)工事完了後の宅地または建物の売買の場合
手付金等の保全措置としては「銀行等による保証」と「保険事業者による保証保険」と「指定保管機関による保管」の3種類の措置のうち、どれか一つを講じればよい。

3.保全措置が不要とされる場合
次の4とおりの場合には、保全措置を講じる義務がない。

1)金額の要件を満たさない場合:
上記1.の金額の要件に到達しないならば、保全措置は不要である。
2)売主が宅地建物取引業者でない場合:
保全措置を講じる義務を負うのは宅地建物取引業者だけである
3)業者間取引である場合:
売主・買主ともに宅地建物取引業者である場合には、両者とも不動産取引に精通しているので、保全措置は不要とされる(宅地建物取引業法第78条第2項)。
4)買主がその宅地建物について登記を取得した場合:
保全措置は物件の引渡し前の措置であるので、買主が登記(所有権移転登記または所有権保存登記)を取得した場合には、もはや保全措置を講じる必要はないとされる。

4.「工事完了」の意味について
上記1.および2.では、工事完了前と工事完了後で扱いが異なる。この「工事完了」の意味については、宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方で次のように説明されている。
工事完了は「売買契約時において判断すべき」である。また、工事の完了とは「単に外観上の工事のみならず内装等の工事が完了しており、居住が可能である状態を指すものとする」。

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